不安がよぎり・・・
でも待てよ、海外旅行で人気とはいえどもイタリアはなにしろ危い所だと聞いています。
ここでかばんを降ろしたら、われわれがそこまで行くのにまだ時間がかかる。
見れば廊下の巾いっぱいにかばんを積み上げた隣のお嬢さんも、窓からひとつずつ降ろしているところだ。
その隣もまた隣も。
だから廊下を歩いて行くわけにはいかないのだ。
つまり今は、まったく汽車から降りられない状態なのだ。
それでも下から男は全身で降ろせ、降ろせ、かばんを降ろせ、と叫んでいます。
これをのがすとこの膨大な荷物はこの真夜中、どうなるのか。
えい、と、かばんをひとつ降ろした。
よいしょ、と受け取った男、はい次は、と、またもやおいでおいでをやっています。
ひとつ渡したらふたつも同じと、やがてスキーを含めて五個の荷物は彼の手に。
そしていつの間に持ってきたのか、手押車の上にちゃんとのせられていました。